On the Bowery (1957) Dir.Lionel Rogosin
邦題「バワリー25時」
カサヴェテスがこの映画によって映画作りに目覚めた、と聞いてからずっと見たいと思っていた。Film Forumで一週間だけの上映があり見る事が出来た。このタイトルのBowery(バワリー)ストリートは、今もあるマンハッタンのイーストビレッジからロウワーイーストに続く大通り。数年前、Whole Foodsという大型スーパーが出来てから明るくなり、しゃれた店も増えてきている。私も、ついこのあいだもそのバワリーにあるレストランで食事したばかり。そこが、50年も前には、酒ボトルを片手に千鳥足の日雇い労働者のたまり場だったそうで、そんな輩のリアルな姿をカメラに納め、ちょっと小芝居までさせたというのが「On the Bowery」だ。
出ている役者がみんな素人でアル中。主人公のレイだけは、アル中にも関わらず、グレゴリー・ペックの劣化版みたいな雰囲気で割に男前だが、あとの面々は、鼻がつぶれている、足がない、目がいっている、見えない誰かと話している等の本物たちばかりだ。道で寝ている酔っぱらいは、自力で立てずに、気の抜けた起き上がりこぼし人形のように、ゆらゆら体を動かしている。そんなショットの連続で始まる。
監督はイタリアンネオリアリズムの影響をうけたというそれなりの映画論もあるらしい。また、古き良きアメリカの数少ない闇の記録として、こうして現在大きな関心を向けられているが、正直言って映画的な魅力は乏しいように思う。確かに監督は、何ヶ月もこのストリートに通い、酔っぱらいと仲良くなることで、彼らの自然の状態をまんま写し取る事には成功しているが、どうもとってつけた脚本部分が意味がないし、アル中のおっさんらが笑ったり喧嘩したりする姿は、おもしろいことは間違いないけれど、私には、この様子は動画としてでなく、写真で見たほうが想像力がわき、魅力的に思えてしまう。比較的まともな日雇い労働者の主人公が、バワリーにやって来てから、酒に溺れどつぼにはまっていく、というだけのシンプルな筋にも関わらず、時間の流れが今イチつかめず、結局印象に残るのは、名もなきおっさんたちの顔、顔、顔だ。それ以上でもそれ以下でもない。カサヴェテスの「Faces」や「Husbands」に影響が如実に現れているのは明らかだが、そう考えると、カサヴェテスが、このOn the Boweryを元手にいかに素晴らしく映画的想像力を働かせたがわかる。
- November 21 2010 | - Read More →


